東方好きの隠れ家

暇な時には小説書いたりいろいろやってます。「レギオンズ」というサークルのメンバーです。

ストーリー書くやる気を起こすための簡単なストーリー

これは別の世界線のお話。(多分)
それ以上でもそれ以下でもない。






俺はレギオンズという組織に所属していた。
それはほんの些細な出来事だった。
出会い、誘われ、応じた。
それだけだった。
最初は特に何も感じない、ただの能力者の小さな集まりとなっていた。
時には活動資金を集めるために洋菓子店で働いたときもあった。お陰で洋菓子を作るのは得意だ。
レギオンズの活動範囲はどんどん拡大していった
時には盗賊や犯罪組織を壊滅させた。
時には遺跡探索をした。
時には皆で飯を食いに行った。
時には政府を説き伏せ、同盟を組んだ。
そして時には近所の住民の依頼を受け問題を解決する。


……最初、何も感じなかった時間が、

いつしかかけがえのない時間となっていた。

俺が依頼によって見つけた少女は、
いつしか俺の側にいるようになった。

人と話すのは得意ではなかった。
だが少女の影響か、今はそれほど酷ではないし、話すのに抵抗もない。

この組織のメンバーとは、
最初は衝突もした。
だが、ともに同じ時間を過ごすうち、分かり合うことはできた。

俺の隣には仲間がいた。
俺の側には少女がいた。
俺の心はいつの間にか満たされていた。

幸せだった。


幸せだったんだ。














今、俺の隣には誰もいない。
俺の側には誰もいない。
思い出はとうの昔に薄れていた。
俺の心はもう満たされてはいなかった。
俺はきっと、幸せになってはいけない者なのかもしれない。

俺の目に光はもう映らない。
だってここはあの場所ではないから。
俺はもうみんなに合うことは出来ない。
だって俺はもう俺ではないから。


俺は、世界を救うという『正義』のために自分の存在を捨てた。
そして、新しい『存在』となった。

今俺は、真っ暗で何もない空間にいる。
知識として得た情報では、宇宙が生まれる前には『無』があったとされる。
ここはそれに近い印象を受ける。
何もない、というより、何かあることの方が不自然であるかのように感じられた。
認識上、ここを『無』と表現することにする。



後ろから声をかける者がいる。
ここには俺以外誰もいないわけではなかったようだ。
それは機械仕掛けの男だった。
ここにいましたか、と彼は言った。

彼とは面識がある。遺跡探索の際発掘した古代の戦略級兵器。『カノープス』と名付けたものだ。
前の世界を去る際には、彼の力を『使った』。
後から聞いたことだが、彼の『仲間』とやらは『チクタクマン』、『Deus ex machina』と彼を呼んでいるという。



カノープスに案内され、俺は何も見えない空間の中を移動する。

真っ暗だった空間がふっ、と変わった。

人間では正気ではいられないような光景がそこには広がっていた。 

カノープスが俺を連れてきた場所はとても大きく開けたドームの様だった。
壁や床と思われるものは肉の塊のようで、一面は赤黒く染まっている。
造りは王宮などに近い印象を受けた。
中心には玉座がある。
玉座には大の字になって寝そべっているような様子に泡立ち膨張と収縮を繰り返す『何か』があった。

カノープスが言うにはここは宇宙の中心部だそうだ。
ここには『Azathoth』と呼ばれる存在が眠っているという。
何故ここへ連れてきたのか、と尋ねてみた。

ただ、君に見せておきたかった。とだけ、答えは帰ってきた。
訳がわからなかった。

また、静寂が支配する、真っ暗な場所に戻ってきた。
何もない、殺風景な場所だ。
カノープスはまた来ます、とだけ言い残してこの場を去った。

また『無』には静寂が訪れた。


…………カノープスが去ってどれぐらい経ったのだろう。
ついさっきのことだとは思うのだが、どれくらい時間が経ったのかはわからない。

床があるのかは理解不能だが、取り敢えず寝転がってみることにした。



────アデル・デュランダル
ふと、俺の…昔の名前を思い出した。

あぁ、幸せだった。
だが、出来れば戻りたい、などとは思わなかった。
思わないようにしていた。

今の俺は昔の俺ではないから。
きっと、俺が戻ってきたら皆は俺を恐れるだろう。

俺はもう戻れないのだ。
あの時から。

だって、


俺は…









……もしお前達が俺の声を聞き取ることができたのなら。

もしお前達が俺の存在を思い出したとしたら。

──その時は、俺を殺しに来い。

真の『正義』を求め、掴み取るために。